REPORT / PHASE 1 現状把握

巧報社 工場見学報告書

現場ヒアリングに基づく課題整理と今後の方針
訪問日2026-04-16
訪問者高木幹太、高木悠哉(zeeglo)
ヒアリング対象笠井さん(事務)、杉浦さん(前工場長)、小栗さん(現工場長)、伊佐地さん(経理)、孝浩さん(社長)、酒井さん(新人)
目的紙→デジタル移行および生産計画AI支援に向けた現場一次情報の把握

0. 結論サマリー

今回の見学で明らかになったこと

巧報社の業務には、「データ化すべき領域」「職人として残すべき領域」の線引きが明確にある。加えて、想定以上に差し迫った人的リスク(前工場長の2ヶ月後退職)と、システム化のボトルネックが経理マン(既存基幹システム)の入出力柔軟性にあることが判明した。

最重要3課題

TOP 1 — 人

前工場長の暗黙知が失われる危機

退職まで約2ヶ月、引き継ぎ未着手。計画立案の思考プロセスが完全に本人の頭の中にある。

TOP 2 — 業務

営業の手書き作業指示書がすべての起点

ここがデジタル化されない限り、下流(納品書・日報・請求書)のすべてが変わらない。

TOP 3 — システム

経理マンが「入出力の閉じた箱」

CSV/API連携が開かない限り、二重管理・手作業は解消しない。技術的な分岐点。

1. 今回新たに把握した業務フロー

1-1. 笠井さん(事務)の1日の流れ

朝:前日の作業日報を集計 → 台帳に記載
  ↓
明日の印刷予定を作成(※実質は「元工場長」=杉浦さんが作成)
  ↓
紙の手配(在庫確認 → 足りなければ発注 → 配達指定)
  ↓
営業から降りてきた「工場渡し」(=作業指示書)を受け取る
  ↓
面付け・段数を見て、紙とケース(箱)の発注をかける
  ↓
工場に回す

ポイント:「工場渡し」が全ての起点。これが降りてこないと笠井さんの動きも始まらない。

1-2. 杉浦さん(前工場長)の生産計画ロジック

1-3. 伊佐地さん(経理・事務)の業務

1-4. 見積・原価計算の仕組み

2. 課題の整理

A. 人的リスク|引き継ぎ問題

#課題深刻度補足
A-1前工場長(杉浦さん)が約2ヶ月後に退職。生産計画の知識がほぼ全て本人の頭の中★★★本人も2年前から退職意向を表明していたが、引き継ぎがほぼされていない
A-2現工場長(小栗さん)は「機械を動かす」ことに集中しており、計画立案業務を引き継ぐ時間を確保できていない★★★「生産を止めない」が最優先のため、計画立案の並走に入る余裕がない
A-3新人(酒井さん)の育成プランが不明確。ただ印刷を覚えている段階★★☆本人の配置意図・将来役割が周囲に共有されていない
我々の判断:A-1は今すぐやらないと間に合わない。杉浦さんの思考プロセスを動画・音声・並走観察で記録し、現工場長(小栗さん)に並走する期間を確保することが必要。これが先で、システム化はその後

B. 業務フロー|起点がすべて紙

#課題深刻度補足
B-1営業が作業指示書(=工場渡し)を手書きで作成。全てのスタート地点がアナログ★★★ここが変わらないと下流(日報・納品書・請求書)もデータ化できない
B-2作業指示書は工場長が「修正」することがある(機械特性・サイズ微調整)。誰がいつ編集したか追えない★★☆将来的には編集履歴の追跡が必要
B-3納品書は作業指示書を元に手作業で発行。二重入力になっている★★☆作業指示書がデジタル化されれば自動発行が可能
B-41階(工場)と2階(事務)を紙が物理的に往復している★★☆発注(FAX)・工場渡し・納品書など
我々の判断:B-1が最重要かつ最優先。ここをデジタル化すれば、納品書・日程表・進捗管理のほぼ全てに効いてくる。最初の一歩はここから。

C. 生産計画|職人暗黙知の扱い

#課題深刻度補足
C-1銅の切替コスト、機械特性、納期、セット替え順序を加味した計画立案が完全に属人的★★★「体で覚えた」もので、ルール化されていない
C-2過去の印刷実績(どの順で何を刷ったか)がデータとして残っていない★★☆最近動画は出せるが、蓄積されていない
C-3各商品の「銅サイズ・インク配色・紙幅」はラベルには書かれているが、構造化されたマスタがない★★☆営業は把握しているが暗黙的
我々の判断:計画立案の完全自動化は目指さない。杉浦さん本人が「AIを基準にデータを作り、それを叩き台に自分で調整できたらありがたい」と明言しているため、「工場長の計画立案を支援するAI」という位置付けで設計する。まずは実績データの蓄積が先決。

D. 経理・事務|二重管理と経理マン依存

#課題深刻度補足
D-1経理マン(基幹システム)の入出力が閉じていて、CSV/API連携ができない(あるいは未検証)★★★これが開かないと、どんなシステムを足しても二重管理が解消しない
D-2日経表(経理マン)と支払い一覧(Excel)を毎月突合している(手作業)★★☆経理マンに取引が登録されていない仕入先があるため
D-3オフコンと経理マンの計算式整合確認が途中で止まっている(営業しか検証できないが時間が取れない)★★☆見積計算の一元化が進まない
D-4仕入先発注はFAX・電話が主流。メール化が中途半端★★☆相手都合でFAX残存。顧客からの納品書・請求書が手書きで来るケースもある追記
D-5社内独自の原価計算・金額情報は「田口さん(経理)以外触れない」文化★★☆権限設計を整理した上で、見える化の範囲を広げるべき
D-6仕掛品の年次計上作業が手作業で負荷が高い新規★★☆年1の決算時に伊佐地さんが手作業で作成。経理マンから請求書ベースで自動出力できれば解消可能
我々の判断:D-1の経理マンCSV出力・入力可否の確認が、システム全体の設計を左右する分岐点。ここの調査を最優先で実施する。

E. 在庫・備品管理

#課題深刻度補足
E-1紙・備品の置き場所が固定ルール化されていない(感覚で管理)★☆☆厳格化するより、現場の感覚を残した方が良い領域
E-2備品発注は納品書ベースの手書きメモ管理★☆☆頻度が低いため、優先度は低い
我々の判断:ここは今回のデジタル化スコープから外す。厳格なルール化はかえって現場の柔軟性を損なう。

F. 特殊案件・例外

#課題深刻度補足
F-1カームズ案件は納品方法・数量が通常と大きく異なる。システムに混ぜると混乱する★☆☆一旦スコープ外(現行運用を継続)

G. 組織・意思疎通

#課題深刻度補足
G-1社長と現場(工場長・事務)の間で、システム化のスピード感・難易度の捉え方に幅がある★★☆経営視点からはデジタル化の可能性が広く見え、現場からは職人領域の多さが見える。両者をつなぐ整理が必要
G-2新規営業2人が今日、工場見学に来ていたが、zeegloとの連携が事前に設計されていなかった★☆☆次回は社長と進め方を整合
G-3「上(事務)と下(工場)」という分断意識がそもそもあり、情報が物理的にしか流れない★★☆システムで自然に解消するはずだが、意識も変える必要あり

H. 笠井さんの稼働分析新規

#課題深刻度補足
H-1笠井さんが「会長のCALM(カームズ)手伝い(ラベル貼付)」などの手作業に時間を取られている★★☆カームズ案件はスコープ外としたが、笠井さんの稼働としては別途見直しが必要
H-2笠井さんの業務の全体稼働比率(本務 vs 応援・雑務)が未把握★★☆本プロジェクトの目的の一つが「笠井さんを楽にする」ことなので、稼働分析は必要
我々の判断:笠井さんが実際に何にどれだけ時間を使っているかを一度可視化し、本務以外の手作業をどこまで削れるかを整理する。

3. スコープ再整理(今回の見学を受けて)

✓ やる(優先度順)

  1. 前工場長の暗黙知の記録・並走(人的引き継ぎ)
  2. 営業の作業指示書デジタル化(起点)
  3. 経理マンのCSV入出力・API連携の可否調査
  4. 作業日報のデジタル化
  5. 過去実績データの蓄積開始
  6. 笠井さんの稼働分析

✗ やらない/後回し

  • 紙・備品の厳格な在庫管理システム化
  • カームズ案件の統合
  • 生産計画の完全自動化(支援に留める)
  • 原価・金額情報の全員閲覧化(権限設計が先)

? 社長にお伺いしたいこと

  1. 前工場長(杉浦さん)の引き継ぎをどう進めたいか
  2. 経理マン(基幹システム)の扱い・ベンダー問い合わせの可否
  3. デジタル化の優先順位・スピード感

4. 社長にお伺いしたいこと

今回の見学で、課題の全体像と優先度はzeegloとして整理できました。一方で、どの課題をどのスピード感で解消していきたいかは、社長のお考えを伺った上で進め方を決めたいと考えています。以下の3点について、ご意向を共有いただけますでしょうか。

Q1

前工場長(杉浦さん)の引き継ぎをどう進めたいか

  • 残り約2ヶ月。現工場長(小栗さん)に並走させる時間を業務調整してまで確保するか
  • それとも、生産優先で、引き継ぎは限定的に行うか
Q2

経理マン(基幹システム)の扱いについて

  • システム会社にCSV出力・API連携の可否を問い合わせてよいか
  • 将来的に経理マンを中心に据え続けるか、外部連携を前提とした再設計を視野に入れるか
Q3

デジタル化のスピード感・優先順位

  • 「営業の作業指示書デジタル化」「生産計画支援」「経理連携」「笠井さん稼働改善」のうち、どれを最優先に進めたいか

5. 所感